平成14年度静岡県住まいの文化賞 優秀賞受賞にあたり 2003年3月

『夏涼しく冬暖かい杉の床にゴロ寝、柱や梁を眺めて木の温かみを実感する家』とは、

『○○ソーラーシステム』とか、クーラー・エアコンの類いや暖炉などの、
大きな空間を冷暖房することができる設備は一切設けなかったこの家で、
仕事の忙しいご主人が、
居間の厚さ4pの杉縁甲板の床にゴロッとなったまま朝を迎えることが
「寝室の布団で寝るよりもはるかに多いんですよ!」
と伺ったことから名づけました。

もちろんエアコン専用コンセントも設けましたが、
昨年の夏はエアコンを取り付ける間もなく乗り切られたそうです。

真夏日・熱帯夜続きの暑い夏を過ごした我が家と比べると、
にわかには信じられませんでした。
涼を取る機械仕掛けと言えば扇風機と天井扇、
それと、吹き抜け最上部に設けた排気用の有圧換気扇だけです。

それよりも窓を開け放って自然の風を通すほうが気持ちがいいという、
いたって自然な家です。

冬も、2階まで吹抜の大きな空間を到底温められそうもない
小さな石油ファンヒーターや電気カーペット・電気こたつぐらい、
子供部屋には足元の電気ストーブだけ。

それよりも、棟梁の作ったの座卓型の囲炉裏を囲んでの家族団らん。
手をあぶりながら暖を採る『採暖』という
自然というか原始的な方法で2度目の冬も難なく過ごされたようです。

床・壁・天井・屋根全て断熱性ある杉の板に覆われていても、
窓を開ければ体温よりも高い外気が入り込んできた日には、
汗も噴き出たことと思います。

それでも、慌ててエアコンを取り付けることなく、
窓を開け放って、
エネルギーに頼らない自然な住まい方を実践されたことには頭が下がります。

○○ソーラーシステムといえども、製造過程でエネルギーを消費します。
冷暖房もエネルギーが必要です。
また、冷房室外機の廃熱も環境に問題です。
機能優先で、意匠に凝った設計ではありませんから、
今回受賞させていただいたのも、
こうした自然な住まい方を評価していただけたものと思います。

このお住まいを設計させていただくにあたって託されたことは、
いわば『終の棲家』にしたいので40年住み続けられる耐久性と、
東海地震も叫ばれて久しいことから耐震性、
それと、
なるべく定期的なメンテナンスに気を使わない住まい造りということでした。

最近の住まい造りは、
システム建材と称する薄くスライスした化粧板やプリント貼りの化粧造作部材が主流で、
傷ついたり汚れたり古ぼけてくると、貼り替えや貼り重ねたりするしか手はありません。
とても40年もの間、住み続けることは難しく、飽きもくるものです。

そこで、長い間、愛着を持って住まうには、
化粧が剥がれることなく、
疵や滲みもまた思い出となるような『木構造表しの住まい』を提案しました。

具体的には、
台所と浴室を除く全て、柱も梁も母屋も垂木も全ての構造材を表しにする。
そして、耐震性を高めるために、
いわゆる『板倉造り』の杉板をに替えて、
36o厚の杉3層パネルを柱間に挿入するというものです。
集成パネルなので、無垢板のような乾燥による隙間やねじれも生じません。
そのまま内装仕上げになり、
耐震性ばかりでなく調湿・保温・断熱といった木の持つ力が十分生かされるに違いないと考えました。

杉板を、杉3層パネルに替えた造りは、
施工例を見たこともなかった、
いわば、机上の空論ともなりかねない提案でしたが、
賛同していただいたお施主様と、
見たこともない工法や金物で、
さぞかしやりにくかったであろう工事に努力を重ねていただいた棟梁のお陰で、
無事完成させることができ、賞までいただけることになったことと思います。

この場をお借りいたしまして、
ここにいるお二方、
そして審査員の皆様に感謝申し上げます。
ありがとうございました。

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